『グッド・ドクター』はなぜ特別なのか?面白いドラマとの決定的な違いと、私が求めた心の機能

【思想の核】プレーンな哲学

私たちは二つの熱狂を持っている

海外ドラマを見ていると、時々不思議な感覚に陥ることがあります。寝る間を惜しんで「次へ」ボタンを押し続けてしまう作品と、見終わった後でも静かな感動が胸に残り、何度も反芻はんすうしたくなる作品

どちらも素晴らしい作品ですが、この二つの間には、脳が受け取っている栄養素(機能)に決定的な違いがあります。

今回は、私が個人的に楽しんだ名作たちを例に挙げながら、私たちが無意識に感じている面白さ特別感の正体を、このブログの視点(装飾と本質)で解き明かしてみようと思います。

そこには、私たちが人生や投資において何を大切にしたいかという、価値観の根源が隠されていました。

スリルという極上のスパイス

まず「面白い!」と夢中になった作品たちについて話しましょう。私にとってのそれは『プリズン・ブレイク』や『ウォーキング・デッド』、『マニフェスト』といった作品たちです。

これらは間違いなく、エンターテイメントの傑作です。しかし、私の中では「愛する特別な一本」とは少し違う場所に分類されます。なぜなら、これらの作品が提供してくれる機能は、刺激(スパイス)だからです。

終わらない「不確実性」を楽しむ

これらのドラマの推進力は、「不確実性」と「人間関係のノイズ」です。

計画通りにいくか?(プリズン・ブレイク)

誰が裏切るのか?(ウォーキング・デッド)

この謎の裏には何がある?(マニフェスト)

これらは、私の脳に「次はどうなる?」という強烈な好奇心と緊張感を与えてくれました。退屈な日常を忘れさせてくれる、遊園地のアトラクションのような装飾された体験。それは、人生における最高のスパイスとして、確かに必要な機能です。

装飾を剥がした先にある「調和」

一方で、私が「特別だ」と感じ、心の奥底で愛してやまない作品があります。それが『グッド・ドクター 名医の条件』です。

前の章で挙げた作品がスパイスだとすれば、この作品は私にとって、心を満たす主食(プレーンな素材)でした。なぜなら、ここには私が追い求める美しさの本質があったからです。

ノイズがない世界で、機能が輝く美しさ

このドラマの主人公ショーンは、自閉症(サヴァン症候群)であり、他人の顔色を読んだり、嘘をついたり、駆け引きをしたりといった社会的スキル(人間関係の装飾)を持っていません。

多くのドラマが疑惑で物語を盛り上げるのに対し、このドラマの構造は真逆です。

周囲の医師たちは最初、偏見や政治的な対立という分厚い衣(装飾)をまとっています。しかし、ショーンの「ただ命を救いたい」という、嘘偽りのない純粋な機能(本質)に触れることで、周囲の人々の衣が剥がれ落ちていくのです。

そこにあるのは、ハラハラする騙し合いではありません。複雑に絡まったノイズが解け、人々があるべき誠実な姿に立ち返っていく、調和浄化のプロセスです。

私がこのドラマを見て涙するのは、悲しいからではなく、世界が本来持っているはずの、純粋で美しい機能(善意)が、混じりけなしに提示されたことに感動しているからだと気付きました。

私たちが「本質」に帰る場所

こうして整理してみると、ドラマの好みにも、私のプレーンな哲学が色濃く反映されていることが分かります。

面白いドラマ

日常を彩るための、刺激的な装飾を楽しむもの。

愛するドラマ

嘘や見栄というノイズを排し、誠実さという本質に回帰するもの。

私は、スリル満点のドラマも大好きです。しかし、最終的に心が帰っていく場所は、やはり嘘のない世界でした。

これは、投資やモノ選びでも同じです。派手な値動きやブランドという刺激も面白いけれど、最終的に私たちが求めているのは、そのモノが持つ純粋な機能が、生活を豊かにしてくれるという、静かで確かな調和なのかもしれません。

もしあなたが、何か特定の作品を「特別だ」と感じているなら、そこにはきっと、あなたが人生で最も大切にしたい本質が隠されているはずです。

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