冷凍ご飯を無理やり切ろうとして指を負傷し、キズパワーパッドを貼ったら数日後にドス黒く変色しました。「壊死したのか!?」と焦って剥がして確認した結果、それはただの「乾いた血」でした。本記事では、指の切断未遂から、キズパワーパッドの変色騒動、そして現場でSEが下した判断プロセスを共有します。
目次
出張先での2合のモノリス生成
私が仕事の関係で長期出張に行っていたときの話です。ホテル暮らしではなくマンスリーマンションのような環境なので、生活費を抑えるために自炊をしていたのですが、ここで問題が発生しました。
私は普段、ご飯をまとめて炊いて、ラップで小分けにしてから冷凍する派です。しかしその日は、あいにくラップを切らしてしまっていました。「まぁいいか」私は手元にあった「2合くらい入る深めのタッパー」にご飯をぎゅうぎゅうに詰め込み、粗熱をとってから冷凍庫へ放り込みました。
翌日、そこには「2合分の巨大な氷塊(モノリス)」が生成されていました。これが、悲劇のトリガーとなります。
正規プロセスの省略による事故
夕食時。私はその「米の塊」をレンジで解凍しようとしました。しかし、密度が高すぎるためか、表面は柔らかくても中心部はまだ「カチカチ」の状態でした。
ここで私が踏むべき手順は明白でした。「もう一度レンジに入れ、ワット数を落として数分加熱する」これです。
しかし、疲労が私の判断を狂わせました。「……包丁で割れば、いけるんじゃないか?」
原因は、「あと数分待つのが惜しい」という些細な効率化への欲求です。私は半解凍の米塊に対し、包丁をあて、左手で背を押さえ、体重を乗せて押し込みました。
ズルッ
不安定な面に過度な荷重をかけたことで、私はバランスを崩しました。背を押さえていた左手が滑り落ち、そのまま包丁の鋭利な刃先を、力いっぱいなぞってしまったのです。結果、左手中指の遠位指節間関節(第一関節)から指先にかけて、スパッと裂傷が入りました。
初期対応
鮮血を見た瞬間、私はドキッとしましたが、すぐに我に返り、冷静に次の対処を行いました。
直接圧迫
清潔なガーゼやティッシュを傷口に当て、強く押さえることにより止血できる時間を稼ぎます。
挙上
患部を心臓より高い位置へ置くことで、患部の血圧を下げ、止血の邪魔にならないようにします。
しかし、以上の対処も虚しく、トラブルが発生します。止血できたと思いきや、指を少しでも曲げると、皮膚の張力で傷口が開き、再出血してしまうのです。これは思ったよりも深い……。私は片手で指を圧迫したまま、財布だけを持って近所のドラッグストアへ急行しました。
購入したのは、人類の英知「キズパワーパッド」。
帰宅後、傷口を水道水で入念に洗浄し、水分を優しくふき取り、「手で温めて粘着力を高めてから貼る」という正規の手順を徹底しました。
経過観察
キズパワーパッドを貼ってから2~3日後。仕事中に、ふと指を見た私は戦慄しました。
半透明のパッド越しに見える傷口が、ドス黒く変色しているように見えたのです。
通常、キズパワーパッドは浸出液を吸って白く膨らむはずです。しかし、これはどう見ても「黒」に近い。私の脳裏には「壊死しているんじゃないか?」という心配がよぎりました。
もし、傷口の洗浄が不十分で雑菌が繁殖していたら?指先が腐り始めているとしたら?
現場での意思決定
今すぐ剥がして確認すべきでしょうか?しかし、私が今いるのは粉塵や油汚れなどがある、清潔とは言えない現場環境です。ここで密閉環境(パッド)を解放し、生傷を晒すことはリスクが高すぎます。
リスク1 壊死の進行
緊急度:高
発生確率:不明(ただの古い血液の可能性もある)
リスク2 現場での二次感染
緊急度:中
発生確率:極めて高い(この環境下で開放すれば不可避)
結論 現状維持
「帰宅後、清潔な環境で直ぐに確認しよう」と決め、それまでは不安を押し殺して業務を遂行することにしました。
結果
長く苦しい勤務時間を終え、帰宅。手洗いを済ませ、恐る恐るキズパワーパッドを剥がします。
「頼む、腐っていないでくれ……!」
流水で洗い流し、傷口を確認するまでドキドキでした。そこには、まだ塞がりきってはいないものの、綺麗な断面の傷口がありました。肉芽などは見当たりませんが、少なくとも腐ってはいません。
パッド越しに見えた黒いものは、傷口から出た血液が酸化して固まった、単なる黒い血でした。そしてパッドの裏側には、綺麗な赤い血が張り付いていました。
「……よかった、壊死してない!」
安堵とともに、ドッと疲れが出ました。それは、重大なバグだと思って徹夜でログを解析したら、ただの設定ミスだった時のような脱力感に似ていました。
安全第一は家庭でも
今回の事故では大きな損害を被りました。「電子レンジの数十秒」というコストを惜しんで、「全治数週間の不便と、壊死の恐怖」という莫大なコストを支払ったことです。
現場で毎日唱えている「ご安全に」という言葉。これは何も、ヘルメットを被ったときだけの呪文ではありません。自宅のキッチンだろうと、キーボードの前だろうと、「急がば回れ」こそが、最も効率的な近道なのです。
指一本の怪我から、リスク管理の甘さと正常性バイアスの恐ろしさを痛感した出来事でした。
皆さんも、冷凍ご飯と格闘する際は、どうか「物理攻撃」ではなく「熱エネルギー」で解決してください。ご安全に。
追記
今回の件で痛感しましたが、トラブルは常に予期せぬタイミング(深夜や出張中)で発生します。指を怪我するとキーボードが打てなくなり、仕事に致命的な影響が出ます。ダウンタイムを最小限に抑えるためにも、デスクの引き出しや出張カバンには、必ずこれを忍ばせておくことを強く推奨します。
いざという時、この「白い(時には黒くなる)パッド」が、あなたの納期と精神安定を守ってくれるはずです。


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