【ルール解説】F1の「トラックリミット違反」って何?問題視されているカタールGPのコースと公式ルールとの関係について考察!

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F1 2025 カタールGP、終わりましたね。
そして角田選手の10位入賞!おめでとうございます!

さて、スプリントの時のインタビューで気になるキーワードを耳にした方もいらっしゃるのではないでしょうか?
「トラックリミット違反」
トラック…?リミット…?違反?
今回はそんな方のために、F1 2025の公式ルールから、今回話題になった「トラックリミット違反」についての内容、そして一部でそのルールが疑問視されている理由について紹介し、さらにはそのルールの適正性について考察していきたいと思います。

トラックリミットとは何か?FIA公式文書からの引用

では早速、「トラックリミット」という言葉について触れていきたいと思います。
まずは単語を理解するところから…

トラック: サーキットにおける、車が走行するコース。つまり走路のことを言います。

リミット: この場合はコースの端、つまり白線や縁石のことを言います。

ここまでわかればなんとなーく分かりますかね?
コースの端です。
では、その内容について書かれている公式文書を読んでみましょう!

FIA公式文書の紹介

以下は、FIA公式文書である 2025 FORMULA ONE SPORTING REGULATIONS からの引用です。

33.3

Drivers must make every reasonable effort to use the track at all times and may not leave the track without a justifiable reason.
Drivers will be judged to have left the track if no part of the car remains in contact with it and, for the avoidance of doubt, any white lines defining the track edges are considered to be part of the track but the kerbs are not.
Should a car leave the track the driver may re-join, however, this may only be done when it is safe to do so and without gaining any lasting advantage.
At the absolute discretion of the Race Director a driver may be given the opportunity to give back the whole of any advantage he gained by leaving the track.

ではこの内容の要点について解説しますね。

走行義務とコース外走行の定義

ドライバーは、常にトラックを使用するためにあらゆる合理的な努力をしなければならず、正当な理由なしにトラックを離れてはならない。
車両のいかなる部分もトラックに接触していない場合、ドライバーはトラックを離れたと判断される。白線はトラックの一部と見なされるが、縁石はトラックの一部ではない。

日本語訳

トラックの境界は白線の外側であり、縁石の上はトラック外と見なされます。
正当な理由なしに4輪すべてがトラック外に出た場合、この条項に違反するという風に読めますね。

そしてさらに続きます。

コース復帰に関するルール

車両がトラックを離れた場合、ドライバーはコースに復帰できる。
ただし、復帰は安全な場合のみ行い、永続的な優位性を得てはならない。

日本語訳

コース外に出てしまっても復帰は許されますが、その際の最優先事項は”安全性“です。
また復帰によって他の車両に対して優位性を得たり、タイムゲインを得たりしてはいけません。

安全性については何となく分かるでしょうか?
優位性やタイムゲインというのは、ショートカットなどが分かりやすい例ですかね。

さらにさらに続きます。

優位性の放棄とレースディレクターの裁量

レースディレクターの絶対的な裁量により、ドライバーはトラックを離れることによって得たすべての優位性を返上する機会を与えられることがある。

日本語訳

優位性を得たと判断された場合、レースディレクターにはペナルティではなく「優位性を返せ(例:アクセルを緩めて時間をロスせよ)」という指示を出す権限があります。
これは、ペナルティを科す前に、現場で柔軟な対応を可能にする条項です。

公式ルールを理解してからカタールGPのスプリントの状況を見る

2025年のカタールGPのスプリントでは、トラックリミット違反によって後からタイムが改変されて順位が上がったり下がったりしていましたよね。
つまりあれは「ペナルティ」だったわけです。

でも、優位性の返上の機会は与えられなかったのかしら…。
うーん、何とも言えないところですね。
とにかく次にいきましょう。

公式ルールが疑問視されている?理由

一部では公式ルールを疑問視する声もあるようです。
なかでも私が有力だと思った説はこうです。

判定の「一貫性」の欠如

サーキットによって、白線の扱いや、どのコーナーが厳しく監視されるかという適用基準が異なります。レース管理側の監視体制や、審議のスピードにも一貫性が感じられないということが、論争の大きな原因だと思います。

という感じで、公式の管理体制が賛否両論?なんでしょうか。

ここでも、先ほど私が疑問を提示したように、レース中に優位性を返上する機会を与える権限がレースディレクターにはあったのに、それを公平に与えなかったということで問題になっている気がするのですが、気のせいでしょうか。

他にも大事なことがあるので、次にいきましょう。

ルールの適正性を考える

ここからは私の見解になるのですが、現在問題視されていることは脇に置いておいて、とりあえず現環境という背景が与えたルールの適正性について語ってみたいと思います。

サーキットはF1だけのものじゃない

近年、サーキットも安全性を優先する方向にあります。

MotoGPという二輪のレースは、四輪で言うところのちょうどF1という立ち位置なのですが。
そういったレースと併用されるサーキットでは、ターマック(舗装路)のランオフエリアは必須とされています。

そのため、危険なグラベル(砂利道)のランオフエリアを廃止し、より安全なターマックのランオフエリアに置き換えているサーキットが増えてきています。

※ランオフエリア… 車両がコース外に飛び出した際の、安全な避難、減速スペース

グラベルが与えていた物理的ペナルティ

砂利道を走ると、車速が急激に落ちる、またはタイヤが破損する、最悪の場合スタックする、などの物理的なペナルティが発生します。このため、ドライバーには自然とコース内に留まる動機が働きます。

しかし、舗装路に置き換わってしまうと、ドライバーは比較的高い速度を維持したままコース外側を通過し、復帰時にタイムゲインを得ることができてしまいます。

グラベルだった時代では、コース内に留まらなければいけないのと、他のライバルよりも速く走らなければいけないというところで、リスクとリターンの境界線ギリギリを高いレベルでトレースするリスクマネジメント能力が自然と求められていましたし、それが競技性を高めていたと私は考えています。

なので、安全性の高いターマックになったからこそ、FIAが定めた厳格な規則によるペナルティが、かつてのリスクを担保してくれるのではないかと思いました。

「白線」は安全性が奪った「リスク」の代替物

危険なグラベルのランオフエリアを安全なターマックに置き換えなければいけなかった背景を考えつつ、そんな中でもグラベルが与えていた大きなリスクを競技性のために代替したいと考える公式のルール設計は妥当であると私は結論付けます。

しかし、トラックリミットによってリスクを与えるならば、公平に与えるべきであるとの考えには異論はありません。
グラベルは公平に被害を与えていたわけですからね!

カタールGP直後に「トラックリミット違反」がトレンド入りした事実が示唆するもの

結論に入る前に、以上の内容を踏まえて、改めて何故2025年カタールGPの時に「トラックリミット違反」というキーワードがトレンド入りしたのかをまとめてみましょう。

やはり、ターマックのランオフエリアが設置されているにもかかわらず、
高い精度でトラックリミットの違反を検知し、迅速に優位性の返上を指示できなかったことに不満を抱えたモータースポーツファンの方が多かったのかなと思いました。

もちろん、単純にキーワードの意味を調べただけの方もいらっしゃるとは思いますけれども。

ルールは適当、だが監視体制は精度よく、リアルタイムなペナルティを与えるべき

公式のルールは近年の安全性を優先する流れを汲んで考えると適当なものであると思いました。
ただし、監視体制の精度はより高く、より迅速な指示系統を実現させることが必要かなと。

モータースポーツファンの皆様におかれましても、不満なく楽しめる未来が訪れることを心から願っております。

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